ジュリー下戸の歌舞かれて東京

歌舞伎のイヤホンガイド解説員になるのが夢のイチ歌舞伎ファンが書いているブログ

初音ミク10周年とわたし【後編】

こんにちは、ジュリー下戸です。

8月31日は、ボーカロイド初音ミクさんの10回目のお誕生日でした。ニコニコ動画は見ていなくても、「初音ミク」という名前だけは聞いたことがある、という方も多いと思います。先日、彼女がメインのライブと展示を行うイベント「マジカルミライ」へ参加してきました。初めてで驚いたり感動したりしたことがたくさんあったので、記録しておこうと思います。

初音ミク関連の記事を書くとき、わたしは必ず自己紹介として記事を貼っているのですが、

まず前提として、わたしは「10年間初音ミクのファンだったわけではない」「2012年からブランクがある」という状態。わたしが今回マジカルミライへ足を運ぶに至ったのは、上記リンクの「超歌舞伎」で再会したミクさんの、本業を見てみたいと思ったから。そして「バーチャルシンガーのライブ」という、ちょっと想像の及ばない近未来な体験をしてみたいと思ったからです。

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場所は幕張メッセ!3日間あるうちの、9月1日初日に行きました。わたしは運良く、チケットあるんだけど...と声をかけてくださった方がいたおかげで入れたのですが、今回たいへん激戦だったようです。なんたって、初音ミク10周年・マジカルミライ5周年という記念すべき年!!行けて良かったです...。チケットを譲ってくださった方、声をかけてくださった方、本当にありがとうございました。

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マジカルミライは、「企画展」と「ライブ」の2つを軸に成り立っています。ライブは夕方からだったので、昼過ぎにまったりと到着し、企画展を見てからライブ会場へ向かうことにしました。

企画展

「見て」「聞いて」「作って」体験しながら楽しめる展示、それが「企画展」。企業が出展していたり、企画展だけのライブが開催されていたり(見れなかった...)、ワークショップがあったりシンポジウムが繰り広げられていたり、初音ミクを取り巻く様々なものを集めた場所です。

わたしは行く前から、見ると決めていた展示がありました。「浮世絵」と「屏風」です。

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浮世絵スゲ~~~~!!!!!!!

株式会社ホビーストックが製作して、第一回アニものづくりアワードの「クラフトデザイン部門」で金賞を受賞した作品が、製作工程の紹介もしながら展示されており、ガラス越しとはいえかなり近距離で作品を眺められます。

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興味津々。「歌姫東海道 初音未来」というタイトルもワクワクするし、着物の柄を表現するために木に彫られた模様の美しさにため息が出ます。そんなに大きな作品でないぶん、そこに込められた色々なもの(技術とか熱量とか)にグッときて、本当にたまらなかったです。第二弾が企画進行中ということで、今からとても楽しみ!!花魁初音太夫こないかなー!!!!

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もう1つ見たかったもの、「初音ミク燕子花屏風図」!!!!

2016年に代官山のギャラリーで開催された「ぼくらが琳派(りんぱ)を継いでいく展」にも出ていた全長3メートルのド迫力な屏風。今月13日から京都高島屋で開催予定の「ぼくらが日本を継いでいく-琳派・若冲・アニメ- 」展に出るそうで、その前に幕張メッセに上陸しているというわけです。忙しいね。

琳派というのは、大胆でデザイン性あふれる構図が特徴の日本画の流派のひとつ。西洋画界にも影響を与えて、ジャポニズムブームに一役買ったとか買わなかったとか。ちょっと気になるので、後で調べようと思います。

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これ、すごくないですか?初音ミク公式画まんまなんです。コラみたい。それなのに、なぜか目が釘付けになってしまって、しばらく作品と向かい合ってしまいました。もっと日本画に寄せることはできる(さっきの浮世絵みたいに、着物を着るとか、絵のタッチを変えるとか)はずなのに、突如花の中に初音ミクが居る。

この非現実的なかんじが、まさに初音ミクそのものの存在感をよく示しているような気がするのです。彼女は、バーチャルだから場に溶け込むことは決して無い。夢を見ているような、コラ画像を見ているような、時空が歪んでいるようなこの居心地の悪さが癖になって、すっかり作品に魅了されてしまいました。見に来れて良かった。

 この他にも、

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等身大フィギュア(髪の毛の造形がものすごい)とか、

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各キャラクター紹介とか。この辺は、博物館とか美術館に来た気分でじっくり読みました。ヴィジュアルと年齢こそ明確に設定されているけれど、キャラクターの性格が全く明記されていないのですよね。ミクさんは特に、ポーズもまるで人形みたいで、この6人の中では一番生きている感じが薄いというか。その空っぽな感じが、人の想像力と創造力をかきたてるのだろうな、とも思いました。

ライブ

さあ、企画展を堪能したところで、満を持してライブ会場へ。

セットリストはこんな感じ(曲名クリックで元動画にとべます)でした。

1 みんなみくみくにしてあげる♪
2 ストリーミングハート
3 エイリアンエイリアン
4 Singularity
5 ヒビカセ
6 ツギハギスタッカート
7 スイートマジック
8 脱法ロック
9 ドクター=ファンクビート
10 忘却心中
11 どりーみんチュチュ
12 Birthday
13 サイハテ
14 メランコリック
15 右肩の蝶
16 リモコン
17 ダブルラリアット
--- バンドメンバー紹介(Nyanyanyanyanyanyanya!)
18 気まぐれメルシィ
19 Today the future
20 なりすましゲンガー
21 Shake it!
22 メルト
23 砂の惑星
24 39みゅーじっく!
25 Hand in Hand
26 DECORATOR
27 ハジメテノオト

初音ミクのライブは、ボーカルがバーチャルではあるものの、その他はすべて生演奏!バンドのメンバーが脇を固め、痺れる音楽を大音量で楽しむことができます。最初の「みんなみくみくにしてあげる♪」で、音楽にワッと包まれた感動、耳になじみのある「あの曲」を目の前で初音ミクが歌っているという事実に、思わず泣いてしまいました。本当に、サイリウムを振っている暇がないくらいボロボロに泣いてしまいました...。「スイートマジック」は、まさかかかるとは思っていなくて、嬉しくて大興奮。掛け声楽しかった...!「脱法ロック」は事前によっく聴きこんでいたので、レンくんと踊れて超嬉しかったです。驚きは「Birthday」の次に「サイハテ」を持ってきたところ!生と死、自分には縁のないはずの命の歌を歌い上げる彼女に、とてもエモい気持ちにさせられました。「砂の惑星」では、今年のマジカルミライの衣装(かわいい)をお召しになったミクさんが、クールなお顔で「歌って踊ろう ハッピーバースデイ 砂漠にリンゴの木を植えよう でんぐり返り そんじゃバイバイ あとは誰かが勝手にどうぞ」と歌い上げた直後に「39みゅーじっく!」で格別甘いリンゴを植える姿を目の当たりにし、ラストナンバーは「ハジメテノオト」大合唱。「あなたが変わってもなくしたくないものは わたしに預けてね」で、撃沈。泣いて歌えませんでした。

"バーチャル・シンガー"

初音ミク10周年を迎えた8月31日に、初音ミクの生みの親である伊藤博之社長のインタビューが公開されました。このインタビューが本当に面白いのでぜひ読んで欲しいのですけれど、

例えば、初音ミクのライブは透過スクリーンに姿を映し出し行われるが、伊藤氏いわく、観客がいないリハで見る彼女の姿は「存在として何かが圧倒的に足りない」そうだ。現実にはCGとしてステージを演じるわけだが「それを“人”としてみなしてくれる観客側の目というか。観客がミクが存在しているということを肯定し、同調しているからこそ存在が成り立つんだと思います」と、受け手側の総意が初音ミクという存在を補完している。

この文を読んだとき、はっとしたことがあります。超歌舞伎で、わたしが「わたし今、"初音ミクがそこにいる"と思った」ということに気づいたのは、中村獅童さん演じる紋三がミク演じる初音太夫に名前を問い、太夫が「初音でござんす」と答えた瞬間だったのです。あの時、獅童さんがミクを"人"と見なし、存在を肯定しているのを見たから、わたしは彼女の存在をステージの上に感じることができたのだと悟りました。

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マジカルミライのチケットが手に入ると決まったとき、一番わたしが恐れていたのは「つっても、あれ、映像なんだけどね」と急に醒めてしまうことでした。ライブを楽しみたい一方で、わたしは自分がどういう感想を持つのか、とても不安でした。

けれど、それは杞憂でした。ステージの上のバントメンバー、そして何より周囲の観客が、全力で初音ミクの存在を肯定しているのです。その熱を受けて、初音ミクはどんどん実態を帯びていく。わたしだって大人ですから、彼女が映像だってことくらい分かっています。分かっているんですが、ひとたび肯定してしまえば、彼女はたしかにそこにいて、歌ったり踊ったりしているのです。

黒衣の逆だな」と思いました。歌舞伎などの伝統芸能において、黒衣は「いるけどいない」存在です。明らかにそこにいるけれど、観客は舞台を楽しむ上で、想像力によって彼らの存在を消す。そこで「あの人は何の役の人?」と存在を肯定してしまったら、彼らは舞台の上でただ異質なものとして、行き場をなくしてしまいます。初音ミクのライブはその逆で、観客の想像力によって彼女は存在を肯定され、結果「いないけどいる」存在になるのです。それは全く新しいようで、ずっと昔からやってきた「想像力」の使い方でした。

別冊ele-king 初音ミク10周年――ボーカロイド音楽の深化と拡張 (ele-king books)

別冊ele-king 初音ミク10周年――ボーカロイド音楽の深化と拡張 (ele-king books)

 

これ欲しい。

初音ミクのために、日本全国、世界各国から駆け付けたファンたちが、全員で初音ミクの存在を肯定する特別な空間。初音ミクがこれからどんな景色を見せてくれるのか、本当に楽しみになりました。とても楽しかったし、目が離せないコンテンツだと感じたので、これからも遠くからチェックしておこうと思っています!

余談

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超歌舞伎のときに買ったサイリウムを持っていきました。現地の物販は列がどえらいことになっていたし、すでに1本持っているから問題ないだろうと思っていました。

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左手が心もとなさ過ぎました。何かのタイミングで、もう1本買いたい。


そうそう、ライブ鑑賞中、わたしにとって想定外の事態が発生しました。

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ジュリーさんはアラサーです。ときめくにしても、カイトの方が自然なはずなのに(実際、カイトが長い脚を駆使して踊りまくるソロナンバーは興奮したし、腰を回すセクシーな振り付けのときは「フオーーーーー!!!!!」って絶叫しちゃったんだけど)、

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レンくん(14歳)がかっこいい..........!!!!????

脱法ロックで客を煽りまくったり、隙あらばアクロバットしちゃうヤンチャな様子を見ていたら、レンくんがステージに出るたびにドキドキしてしまうようになりました。ノーマークだった。予想外すぎる。でも声はリンちゃんの方が好きです

 

ジュリー下戸でした。ありがとうございました。