ジュリー下戸の歌舞かれて東京

歌舞伎のイヤホンガイド解説員になるのが夢のイチ歌舞伎ファンが書いているブログ

りょかち、アイドル・アレルギーのわたしが初めて推すアイドル

こんにちは、ジュリー下戸です。

突然ですがそこのあなた、インターネット・ローカル・アイドル「りょかち」をご存知ですか。

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「りょかち」は、歌いも踊りもしません。彼女の武器は「自撮り」。自ら「自撮ラー」を名乗り、タイムラインに計算し尽くされた自撮りを放り込むアイドルなのです。インターネットと若者文化に明るい彼女、最近本も出しました。

インカメ越しのネット世界 (幻冬舎plus+)

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彼女のインターネットを見つめる視線が興味深く、また「エモい」という抽象的であいまいな感覚を的確に文字化する聡明さに、気が付いたらファンになっていました。女性アイドルを推すというのは、わたしにとって初めての体験です。書籍刊行記念イベントが1週間に2度あったので、その2度とも足を運んだ末にわたしとアイドル(そして若い女の子)の確執に思いを馳せることと相成りましたので、レポも兼ねて記録しておこうと思います。

行ったのはこれと、

これ。

※記事の中では敬意をこめて、りょかちを呼び捨て表記します。

※いつも通り自分語りから入るので長いです

アイドル・アレルギー

わたしが初めて出会ったアイドルは「モーニング娘。」でした。

小学生時代、わたしのいたコミュニティにおいて、モーニング娘。はみんなの共通言語のようなものでした。給食に牛乳が出るのと同じくらい、女の子がモーニング娘。を好きなことは当たり前でした。

しかし、わたしが家で聴いている音楽といえば「大江千里」「サザンオールスターズ」「渡辺美里」。これは好みの問題なので悪く思わないで欲しいのですが、大前提としてわたしはアイドルに一切興味がありませんでした

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当時転校生だったわたしは、周囲とのコミュニケーションをとるのに必死でした。転校してきたわたしと仲良くなってくれた子は、みんな(見事にみんな)モーニング娘。が好きでした。転校先でいじめられるかも...とドキドキしていたわたしにとって、友人は救いでした。郷に入りてはなんとやら、わたしもモーニング娘。を勉強し始めました。

しかしそもそも興味がないので、いつまで経ってもメンバーの顔と名前を覚えられません。曲のサビだけ覚えて、見様見真似でみんなと踊っていました。
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みんなが集めているモーニング娘。トレーディングカードの、不人気なメンバーのカードを譲ってもらって(時には道端に落ちていたカードも拾って!)枚数を稼ぎ、なんとなくバッグにしのばせておくだけで安心しました。わたしにとっては、パスポートのようなものでした。アイドルのカードを持っていることで「ここに居ても良い」とみなされる、そんな気持ちがしていました。所詮小学生、深い話などしませんでしたから、薄っぺらい知識とはりぼてのパスポートだけで生き延びることができました。

こんなひねくれた付き合い方をしておいて、アイドルを好きになれるはずなどありませんでした。わたしのアイドルへの目は、どんどん歪んでいきました。
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いいよね、アイドルは、かわいかったらお腹がポニョポニョでも歯並びが悪くても歌が上手じゃなくても頭が良くなくても、ちゃんと仕事としてみなされて皆から愛されるから。わたしはブスの一般人だから、そんなアイドルを好きなフリをしないと、コミュニティに属することすらできないんだもの。100点量産しても、水泳大会の代表に選ばれても、出っ歯を治しても、モーニング娘。を好きでいないと輪に入れないんだもの。

 

中学生に上がると、なんとなく音楽の趣味が多様化してきて、別にアイドルを好きでなくても村八分にされることはなくなり、わたしは心置き無くポルノグラフィティアヴリル・ラヴィーンを聴いていました。

だから、AKB48が世間を席巻し始めた際のわたしの絶望ったらありませんでした。
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わたしのくすぶっていたアイドルへの恨みが爆発しました。全員が全員アイドルが好きだと思うなよ!!「AKBでは誰推し?」って、なんで誰かしら推してること前提なんだよ!!そういう時のわたしの決め台詞は「わたし、アンチAKBなんで」。アイドルアレルギーが発症した瞬間でした。

彼女たちが人知れずしているであろう努力を想像できないほど、わたしのアイドルアレルギーは深刻でした。彼女たちは、なんにも悪くない。彼女たちに何をされたわけでもないのに、わたしの拒絶反応は「アンチを名乗る」という形で表れました。

 「若い女の子」への嫌悪

指摘される前に言っておくと、これは嫉妬です。若く美しく、まぶしくきらめく青春時代を送ることができなかったコンプレックス。それに加えて、アイドルを好きなフリをしてやっと居場所を確保していた窮屈な過去。アイドルを見ていると、それらが古傷のようにジワジワと心を苦しめ、いじわるな言葉ばかり口から出るようになりました。

アレルギーはどんどんエスカレートしていきました。やがてどうなったのかというと、若い女の子に対しても同じ気持ちを抱くようになりました。こうなると、ただの老害ですね。彼女たちが話す言葉を「何言ってんのか意味わかんないw」と小馬鹿にし、彼女たちが始めた新しいSNSアカウントを作っては「何が楽しいのか全然わかんないw」とdisり、しまいには「もう別の生き物」と認識するようになりました。

「りょかち」というアイドル

そんなわたしが「りょかち」を認識したのは、Twitterのタイムラインでした。半年くらい前、誰かがリツイートしたものを、たまたま目にしたのだった気がします。彼女のアイコンは、彼女自身の自撮り写真。黒目がちな目、きゅっとつぐんだ口。そしてプロフィールを見たら「自撮り女子」を自称している。

若い女の子は自撮りをするのは当たり前(わたしはもちろん、そういう理由で自撮りを嫌っていた)だと思っていたので、敢えて「自撮り女子」を名乗るスタイルが新鮮でした。そして続く肩書きは「Twitterという小さな村のローカルアイドル」。彼女は、かわいい自撮り写真をアップし続けることでインターネット上で活動するアイドルだというのです。でも、その一方でIT企業の社員だし、なんかライターみたいなこともしているし、インフルエンサーぽい。「自撮り」と「アイドル」のワードが、彼女の武器になっており、それは今まで見たことがないアイドルの形でした。わたしのアイドルアレルギーが、好奇心に変わりました。

はあちゅうさんとの対談が面白い

「自撮り」は「アバター

りょかちにとって、「自撮り」は「アバター」遊び。

彼女は、アイドルの自撮りから美少女ゲームのイラストなどを研究して、自分がかわいく写る角度や光の具合、カメラの角度、シチュエーションを意図的に研究しています。そして、5000人いる(※今はもっと多いけど)Twitterのフォロワーの中に写真を放り込んで、その反応を分析しているのです。Twitterだけではありません。あらゆるマッチングアプリに登録し、自撮りに対するリアクションをこまめにリサーチしているというのです。「この写真はおじさんにウケる」「若い男の子にはこのシチュエーションが評判がいい」といった具合です。自撮りをアップし続けていると、インターネットですから「ブス」などの誹謗中傷もとんできます。それすら彼女にはデータの1つに過ぎません

さながら自撮りの伝道師である。

わたしはこの話を聞いた時、失礼ながら「変態だ」と思いました(もちろん褒めています)。彼女はめちゃくちゃ頭が良くて、冷静で、自分のアバター「りょかち」がインターネット上でどう動くかをコントロールしているのです。「りょかち」はアイドル本人であり、プロデューサーでもある、それでいてとても軽やかにインターネットに暮らしています。

「若い女の子を宇宙人扱いしないで」

下北沢の本屋さんで開催されたトークショーで、印象的なエピソードがあります。

「りょかち」は今24歳。IT企業で働くこともあり、周囲の人には「新世代」とか「俺らとは違う感覚の」とか、そういう言われ方をするのだそうです。そして彼女の存在をダシに「俺らの時代のインターネットは~」と、昔話に花が咲く。その時、「若いりょかちには分かんないだろうけど」という枕詞が、どこかに隠れている。若い女の子を、まるで宇宙人やわけのわからない生き物みたいな目で見る

わたしの背筋が凍る。

ヤバイ。

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わたしのことじゃん

若い女の子のこと、よく知りもしないで勝手に嫌って、彼女たちの文化を真っ向から否定して、君らには分かんないだろうけどねと上から目線で昔話をして。

りょかちに「老害は死ね」みたいに言葉でぶん殴られるかと思いましたが、そんなことはありませんでした(そんなことする子じゃない)。

「使っているサービスや、アカウントの数が違っても、インターネットとの付き合い方が変わっても、世代が違っても、コアの部分は同じなんですよね。共感できるんです

誰かと繋がっていたい気持ち。どこにでもなく思いを吐露したい気持ち。新しいものとの出会い。共感と孤独。インターネットは変わり続けているけれど、わたしたちの方はというと、実はあんまり変わっていないのかもしれません。

アイドル

渋谷のバーを貸し切って、りょかちがバーテンダーをするというイベント「りょかちBAR」が開催されました。こちとら、名前に冠するほどの筋金入りの下戸。申し訳なさを感じたら、さっさとおいとましようと思っていました。

思い切ってドアを開けたら、
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わああ~~~!!ジュリーさんだあ~~~!!

りょかちが手を広げてパタパタ駆け寄ってきてくれるではありませんか。マジか。しかも制服。マジか。覚えてもらっていないと思って挨拶を考えておいたのに、もうそれを全部飲み込んで「りょ、りょ、りょかちさあ~~~ん!!!」。キモオタである。
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このやり取りが、もう本当に嬉しくて「これがアイドル...これがアイドルファン...」と感動を噛み締めるしかありませんでした。そんなわたしの後に、おそらくお偉いさんであろうおじさま方が、りょかちBARのドアを開けました。さすがりょかち、客層がすごい、と感心をしていたら、りょかちがパッと駆け寄って、

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「はじめまして、りょかちと申します!自撮りをやっています!!」

バーでスカートの短い女子高生の制服を着て、ニコニコと挨拶するりょかち。挨拶の二言目に「自撮り」ってワードを平気で出す。元気いっぱいの自己紹介は、まさにアイドルのそれでした。

今までのわたしだったら、きっと彼女の挨拶に対していじわるなことを言ってしまったと思います。でも、わたしは彼女が自撮りをするために毎日研究していることを知っています。彼女が聡明で、自分をうんと客観的に見ていることも。自分の写真に対する周囲の反応を見るとき、異常に冷めた視点を持っていることも。だから「りょかちかっけぇ、徹底してる」と感動しました。

そこで気づいたのです。わたしが今までいじわるなことを散々言ってきたアイドルたちも、影で血のにじむような努力をして、研究を積み重ねて、それを表に出さないように、世界で一番幸せ!みたいな笑顔でそこに立っていること。ああ、わたしは今までなんて失礼なことをしてきたのだろう。胸がギュッと苦しくなりました。

ありがとう、りょかち

わたしのアイドル・アレルギーは筋金入りなので、これから突然アイドルオタクになることは無いと思います。でも、りょかちとの出会いで、わたしの思考回路にはたしかに大きな変化が現れました

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下北沢B&Bにて。りょかち先生の指導により、顔のパーツを隠す作戦。

若い人、未知なるものへのいじわるな見方をやめよう。それって、実はすごくもったいないことだった。ひょっとしたら、同じ想いを持つもの同士、すごく仲良くなれたかもしれないのに。バカだな~と思っていた子が、裏で人知れず努力を重ねていたかもしれないのに。自分が知らないことを楽しんでいる子がいたら、一緒に面白がれる人になりたい。それって、とてもポジティブで健全なことだと思うのです。

そして、人に会いに行こう。正直、IT企業とは何のかかわりもない世界で暮らすわたしにとって、りょかちのイベントに行くことはかなり勇気のいることでした(トークショー中に観客がツイッタースマホやPCで更新し続ける様子はカルチャーショックすぎた)。でも、めちゃくちゃ面白かった。知らない世界があそこにもここにも落ちていて刺激的でした。勇気振り絞って良かったと、心底思います。りょかちが温かく迎えてくれたからに他なりません。ありがとう...!!

 

りょかち本を何度も読み返し、インターネットのこととか色々書きたいことがあるんですけど、字数がとんでもないことになるので別の機会に。トークショーなどで聞いた面白い話は、ほかの人がうまいことレポしてくれているのでそちらを読んで頂ければ良いんじゃないかなと思います(本当に文字数が大変、この段階で5400字超えている)。

インターネットで1番エモい、りょかちレポ記事目指しました。これからも応援してます!

ジュリー下戸でした。ありがとうございました。