ジュリー下戸の歌舞かれて東京

歌舞伎のイヤホンガイド解説員になるのが夢のイチ歌舞伎ファンが書いているブログ

歌舞伎とインターネット、旧友との再会の話

こんにちは、ジュリー下戸です。

4月の末、ニコニコ超会議で、昨年おおいに話題になった「超歌舞伎」を観て来ました。昨年は動画で、しかもタイムシフトでの視聴だったものですから、生で観れなかったことが悔しくてたまらず「来年は絶対に現地で観るんだ...」と決意を固めていました。

超歌舞伎はもちろん面白かったのですけど、何よりわたしにとって「ニコニコ超会議」という場所がかなり刺激的で新体験だったので、その衝撃を忘れないように書いておこうと思います...!!
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次元も時代も超越した超超超カオス空間。「超会議の」超は「超越」の超...。

ニコニコ超会議とは

ニコニコ動画という動画サイト(無料で動画を視聴・投稿ができ、独自の文化が育まれている)発のイベントです。普段動画サイトの中でやっていることを、地上に再現しちゃおうというもの。

企業や自衛隊、政治家、芸能人から一般人、ありとあらゆる分野のオタクが一同に会する怒涛の空間。存在こそ知っていましたが、なんとなくわたしは行かないんだろうなと思っていたのです。人は多いし、わたしはコスプレをしないし、最近はニコニコ動画もご無沙汰。

まさか足を運ぶ日が来るとは。しかも、歌舞伎目当てで。

超歌舞伎とは

2016年の超会議で話題になった、ボーカロイド初音ミクが出演する歌舞伎。もちろん初音ミクは実在しないので、バーチャルで参加。その代わり、歌舞伎役者や鳴り物は本当に歌舞伎界から参加しています。主演は中村獅童丈、脇を澤村國矢丈が固めます。


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まるで初音ミクが実際に舞台に立っているかのような最新鋭のバーチャル映像と、初音ミクと息ぴったりに演ずる歌舞伎役者及びコテコテの歌舞伎音楽のギャップがたまらない、新しい舞台芸術。イロモノかと思いきや、役者も製作チームもガチ

エンターテインメントの新たな可能性を感じさせる革新性」が評価され、何やらすごい賞を受賞した前作。わたしはどうしても生で体感したくて、ずっとこの日を待っていたのです。もちろん、超桟敷(=1階席)の指定席券も買いましたとも。

道のり

正直めちゃめちゃ緊張しました。駅は人でごった返していたし、やっぱりオタクの祭典だからコテコテのオタクルックの方も多かったし、わたしはニコニコ動画をかつてほど視聴しなくなっていたし、超歌舞伎会場までぴゅーっと行って、さっさと逃げ帰ってくる予定でした。
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会場まで、結構歩く。舞浜駅を降りてからディズニーランド入場ゲートまでの「意外に長いけどワクワクして駆け足したくなるあの道」を彷彿とさせますね。超会議をディズニーランド風に「夢の国」なんて呼ぶ人がいたけれど、ちょっと納得。


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 わたしが購入したのは、上から二番目の「超歌舞伎 超桟敷席指定席付入場券」。一般入場券とは異なる、優先入場入口から入ることができます。この、チケット、本当に、買っておいて良かった...!!またディズニーに絡めますけど、いわゆるファストパスみたいな感じの使用感なのですが、なんたってアトラクションの規模がでかいので...。

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晴れて入場。が、迷う。自慢じゃありませんが、わたしは普段あまり迷わないのです。なんとなく目的地にたどり着く。迷っても、遠回りしつつなんとなく到着する。そういうタイプなのですが、超会議では方向感覚も平衡感覚も見失って、同じところをグルグルグルグル回っていました。涼宮ハルヒのテーマソングが聞こえる、東方プロジェクトとけものフレンズが並んで歩いている、本物のお相撲さんがのしのし歩いている脇で、生放送の話し手が観客に囲まれながら色々話している...なんだ、なんなんだここは!!

超歌舞伎開演1時間前に着いたはずなのに、30分間幕張メッセをさまよい続け、マジで間に合わないのではと血の気が引いたのでスタッフさんを片っ端から捕まえて「歌舞伎が...観たいです...」と訴え、ようやく到着。


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間に合って良かった...。席からの眺めはこんな感じです。双眼鏡を持ってくるんだった~と後悔したものの、この舞台の両脇には生放送のモニターがついて役者をアップで写してくれるので、「表情が全然観えないよー」ってことはありませんでした。

開演までの間、面白い恰好をした観客などがアップになって写ったりする(サッカー観戦みたいだ)ので、写りたくない人はうまく顔を隠すか、わたしのように面白くない恰好で行くかしないといけません。

 

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人生初サイリウムも買いました。まさかわたしが人生でサイリウムを持つ日が来るとは思わなかった...。ちなみに、色を色々変えられて面白い。そして想像よりはるかにまぶしい。バッテリーは乾電池!近くに、サイリウムを片手に2本ずつ持って手慣れた手つきで振り回す猛者がいました。戦場だ...と思いました。

2017年の歌舞伎

さて、歌舞伎ファンから見た超歌舞伎、この方のブログがすごく明快で読みやすかったので気になる方は是非読んでいただきたい。

わたしは、今回テーマソングとなった「吉原ラメント」を知らず、そしていざ聴いても「超好き!!!!!」と興奮するには至りませんで、なんとも申し訳ないのですけど、超歌舞伎に関しては「物語」というよりも、最新の技術と歌舞伎の古典技術のガチな共闘ぶりを堪能するのが楽しいなと去年感じたものですから、今年もそんな感じで観ました。
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わたしはチョロい観客なので、もう歌舞伎に関しての感想はただ一言「歌舞伎サイコー」、これに尽きます。バーチャル花魁・初音ミクと並んでも、ギラギラのプロジェクションマッピングにさらされても、サイリウムに取り囲まれても、2017年に電話屋が持っている技術の前に、歌舞伎役者は生身で負けなかった。歌舞伎役者の衣装は、だいたい普段劇場で着ているものとほぼ同じものなはずなのに。考え抜かれ磨きあげられてきた、歌舞伎の、人間の400年の芸術の歴史のすさまじさが際立っていて、歌舞伎役者が見得をするたび鳥肌が立ちました。

原曲「吉原ラメント」では、主人公の花魁は身売りされて泣く泣く遊女になるのですが、超歌舞伎の初音太夫は、花魁道中の美しさに魅了され、自ら太夫への憧れを持ちます。その憧れた対象として、歌舞伎役者(蝶紫さん。美しい)の花魁姿を舞台に出してくれたのが嬉しかったです。女形の、ある種ゾッとするような不気味な美しさに、町娘だけでなく観客も息をのんで道中を見守る、あの瞬間の静けさが素晴らしかったです。

冒頭から國矢さんが全部持っていく展開も痺れました。あまりのかっこよさに開始5分でボロ泣きしました。会場の音が大きくて助かった。鼻めっちゃすすってた。

國矢先生の生徒なんだぜ、わたし(自慢)

物語が支離滅裂で「深く考えたらアカン」というのは歌舞伎あるある。ミクかわいー!もんざかっけー!しんえもんがんばれー!わーい!たーのしー!これがすべて!

わたしと初音ミク

ボーカロイド「初音ミク」が生まれて、今年で10年になるのだそうです。10年前の2007年、わたしは山と川と田んぼに囲まれた田舎町に暮らす、インターネット大好きな女子高生でした。一緒に遊ぶような友達もいなかったので、ずーっと、本当にずーっと、インターネットをやっていました。そんな調子ですから、ミクさんがニコニコ動画に現れてから割とすぐに、わたしは彼女と出会いました。

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合成音声の独特な調子で、なぜかネギを傍らに携えて歌うミクさん。わたしは曲を作ったり、ましてや歌ったり踊ったりするタイプではなかったので、ずっと聴いていました。初音ミクに仲間が増えたり、英語を歌えるようになったりウィスパーボイスが出せるようになったり、有名P(初音ミクに歌を提供するクリエーター)が現れたりと、どんどん初音ミクを巡る世界が広くなっていくのを感じていました。

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ボーカロイドを聴かなくなったのに、深い理由はありません。「ボカロは終わコン」なんて思ったことは一度もなかったし「もう卒業しよう」と決意したわけでもない。ただなんとなく、2012年の終わりころから徐々にフェードアウトしていきました。

昨年の超歌舞伎で、今大好きな歌舞伎と初音ミクがコラボレーションしたことに対し、まあ新鮮な気持ちで興奮もしたのですけれど、なんせ視聴したのがニコニコ動画上だったものですから「初音ミクも進化したんだな~」とのほほんと感心する程度で済ませてしまっていました。
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ところが、今回実際に会場で生で初音ミクを見ることになりました。そしてある場面で、ドキッとしたのです。え?わたし今「生で初音ミクを見ている」?ミクさんは、インターネットのバーチャルアイドル、だったはずなのです。それが、歌舞伎役者の中村獅童丈演じる伊達男・紋三に名前を問われ、

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恋する女の子の心持でありながら、町一番の太夫としての誇りとプライドをもって毅然と答える初音太夫。2007年、彼女は「わたしは言葉って言えない、だからこうして歌っています」という詞を歌っていて(ハジメテノオト)、わたしはこの曲がとても好きでした。そんな彼女の、命の宿った言葉に胸が熱くなり、涙がぼたぼたこぼれました。わたしがボーカロイドの進歩に興味を示さなくなって、昔の曲ばかり聴いていた間に、彼女は見違えるほど成長していたのです。

そして、わたしも。田舎の女子高生は、上京して大学生になり、震災で幼少期の思い出の場所をなくし就職活動をなんとか乗り越え、社会人になって精神を病み歌舞伎に出会い元気を取り戻し、転職してようやくここに立っている。 10年の間に、本当に色々なことを経験しました。17歳だったわたしも、もう27歳。大人になって、そして今大好きでたまらない歌舞伎が、初音ミクとわたしを再びめぐり合わせてくれました
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いつも不思議に思うのですが、昔好きだったもの、以前やっていたこと、そういうのが一切無駄ではないんだよと、歌舞伎は折に触れて教えてくれます。そのたびに、冗談じゃなく「生きてて良かった~」と感じるのです。10年、100点満点の毎日は送ってこれなかったけれど、でも今こうして大好きなものを追いかけて、また大好きなものに巡り合えて、なんだかとても幸せな気持ちです。

生きてて良かった~。

上記のツイートがボカロクラスタさんの間でじわじわRTされていて、見ず知らずの気さくな方たちが声をかけてくれて、また新しい世界を覗けそうです。獅童さんに「振り回せ!」って言われたサイリウムをお守りに、出かけてみたいと思います。

インターネットって面白いね。

 

ジュリー下戸でした。ありがとうございました。