「悪友vol.1」と新橋演舞場の海老蔵さんの話

こんにちは、ジュリー下戸です。

先日、タイムラインで話題の「悪友vol.1」をゲットしました。同人誌「悪友」の今回のテーマは「浪費」。趣味にお金を注ぎ込みまくる(ここでは敢えて「浪費」と呼ぶ)人々のエピソードやアンケート調査に基づく「浪費家」たちの統計(住まいとか年収とか家族構成とか...すごい...)なんかがまとめられています。愛の対象は様々です。ジャニーズ、バレエ、占い...etc。

中でも、発売前からわたしが読みたくて堪らなかったのが「市川海老蔵で浪費する女」。歌舞伎役者・市川海老蔵丈にお金と時間を注ぎまくっている海老蔵ファンのお話というのは、さぞ過激なことだろうと思っていました。でも、予想に反して、「悪友」の海老蔵ファンの女性イセエビ(仮名)さんは控えめで慎ましく、海老蔵丈のことを「海老蔵さん」と呼び、彼女にとっては「かっこいいヒーロー」だと言います。有り金全部注ぎ込んでいるわけではなく、それでも海老蔵丈に手を引かれて飛び込んだ歌舞伎の世界で、彼女はできることをどんどん増やしていきます(新幹線チケットをはじめて手配したり、着物を買ったり)。

彼女の章は、まるでわたしのことを書いたかのように思われてうんうん頷きながら読んでおり、特に、

自分が決して入り込む余地のない、完璧なものを愛する楽しみだって、たくさんあるのかもしれないと思った。

という1文は、頷きすぎて首がもげるかと思いました。わかる。わかりすぎる

そしてイセエビ(仮名)さんは、こんなことも書いていらっしゃいます。

わたしは花道そばの前から3列目あたりが気に入っている。

この部分を読んだ瞬間、わたしは彼女の手を握りしめ、ブンブン上下に振りまくりたい衝動に駆られました。わかる、わかるよ、イセエビ(仮名)さん。だって、わたし先月新橋演舞場で、まさに花道そばの前から3列目で、海老蔵丈を見てきたんだもの。そして、めっっっちゃカッコいいと思ったんだもの。今回は、イセエビ(仮名)さんがこの記事を読んでくださっていることを祈りつつ、「花横前から3列目がメチャ良かった」報告をしたいと思います。

観た演目

わたしが観に行ったのは、2017年1月、東銀座にある新橋演舞場で公演していた「壽新春大歌舞伎」。これは、市川右團次・右近(天才子役)親子の襲名公演でもあり、「右團次」の名前に縁のある成田屋(海老蔵さんとこ)と、ずっと右團次丈が所属し右近丈がこれから入る澤瀉屋(猿之助さんとこ)の役者さんが出演する舞台。ご縁あって大千秋楽のチケットを手に入れたわたし、ドキドキしながら東銀座に向かいました。全然関係ないんですが、この日の昼に転職先の内定を頂いたばっかりで、相当浮き足立っていました。

f:id:jurigeko:20170217214602j:plain しかしこの中車(香川照之!)さん美しすぎる

「義賢最期(よしかたさいご)」超ザックリあらすじ

平治の乱で平家が源氏に勝利した後の世界。平家が勢力を拡大する一方、源氏は徐々に衰退していっている。病気で絶賛引きこもり中の主人公・義賢(よしかた/海老蔵丈)は、源氏の将軍の義弟であるが、平家に下っている。と見せかけて、実は後白河法皇から、源氏のお宝である白旗を預かっている。というわけで、心のうちは源氏にベッタリ。部下である折平(おりへい/中車←香川照之さんね!)も、平家側と思いきや実は行綱という名のコテコテの源氏側だったと分かり、二人は打倒平家を熱く誓い合う。が、義賢が源氏のお宝を隠し持っていることが平家にバレ、義賢殺害と白旗奪還のために大軍が差し向けられてしまった。義賢は討ち死にを決意し、家族を逃がし白旗を折平らに託すと、ひとり屋敷に残り、大軍相手にドチャクソ戦って、ヤバイ死に方をする。

上記の物語に、先妻との間の娘とか、折平の妻とか色々絡んでくるのですが、物語の流れとしてはざっとこんな感じです。あらすじ最後で語彙が死んでいますが、でも後半の立ち回りは口で説明できないほど壮絶でかっこいいので、劇場で見て「ドチャクソ」部分を味わってきてください。

花横前から3列目の景色

歌舞伎には「花道」というのがあって、役者が出入りに演技にヘビーユーズする場所なのですが、そのそばに座るとどうなるのかというと、役者をとても間近で見られます。触ろうと思えば触れますし、触る気がなくても触れるかもしれません(わたしは海老蔵さんが履いている袴がおでこをかすったし、別演目の鬼女のフサフサヘアーが顔にかかった)。でも、役者は絶対にこっちを見ません。わたしたちは居ないものとして、役者が踏みしめる地面に転がる石ころとして、息を詰めて役者を見上げる。そんな席です。特に前から3列目というのは、花道にいる役者が舞台上の役者とやりとりをする時に立ち止まる、まさにその真横なわけです。衣装の刺繍のきらめきまで見えます。役者が声を発するときに息を吸うその呼吸の音が聞こえます。汗のつぶ、目の淵に光る涙まで、乱視のわたしでもオペラグラスを使わなくたって見えてしまう。踏みしめた足音が小さな振動となって座席に響く。贅沢なひととき。

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あと、メッチャいいにおいする(恍惚)!!!!!!

歌舞伎の衣装は、とても古いものを大事にメンテナンスして使っているので、ちょっと懐かしいような布独特の香りがしたり、お化粧やタバコ(舞台で吸う)の香りがしたりします。視覚・触覚・聴覚・嗅覚、全部歌舞伎に持っていかれます。

演目の後半の、ある場面の出来事です。ひとり屋敷に残り病の身体で髪を振り乱して孤軍奮闘する義賢でしたが、あまりに壮絶な闘いに力尽き、花道までフラフラやってくると、突然バッタリ倒れてしまいました。
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いやいやいやいや近すぎる!!!花道は、ちょうど目の高さにあり、倒れ込んだときに着物の袖がもう少しでわたしの肩に触れようかという、そのくらいの近さだったのです。おそらく、今この世界で一番海老蔵丈の近くにいるのはわたし。肩で息をし、瀕死の重症を負いながら、汗を流して目を閉じている、美しき義賢/海老蔵丈..........

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萌え!!!!!!!!!

久しく感じていなかった(耳にもしていなかった、ちょっと死語っぽさもあるような)この「萌え」という感情に、わたしは打ち震えました。海老蔵丈から漂う伽羅(きゃら)の香りにすっかり頭がやられてしまったのか、目の前で苦しむ海老蔵丈(やっぱりイケメンだよ...)にあろうことか母性までくすぐられ、一刻も早く義賢を抱き起こし血を拭い応急処置をし、救急車を呼びたい気持ちに駆られました。呼ばなかったけど。

その後、義賢は目を見開いて起き上がり、長袴を翻して舞台へ戻って行きました。その間数十秒、永遠とも思える時間でした。わたしは「これが花横か...」と、呆然と義賢を見送りました。

こんなことがあって、興奮冷めやらぬ状態で手に取った「悪友vol.1」。イセエビ(仮名)さんのおっしゃる「花道そばの前から3列目」で海老蔵さんに猛烈に萌えた身からすると、本当に、「義賢最期」の海老蔵丈を堪能するのにピッタリだったなと思わずにはいられませんでした。

お気に入りの席

戸板倒しや仏倒れという、危険でダイナミックな技が次々決まって幕となった「義賢最期」。花道横というのは、かくも贅沢な代物なのかと噛み締めながら幕間に幕の内弁当をもりもり食べました。

f:id:jurigeko:20170217214255j:plain おいしい。

食べながら「この席は素晴らしい、素晴らしいから、初めて歌舞伎を観る人を招待したい」と強く思いました。ここはきっと、歌舞伎を面白いと感じさせてくれる席。視界いっぱいに歌舞伎の世界が広がって、触れられる距離で別世界に生きる登場人物の呼吸を聞き、香りを胸いっぱいに吸い込める、とっておきの席なのです。

わたしのお気に入り席は、実は幕見席。あるいは、一等席の前から10列目以降で、舞台のど真ん中を拝める席です。うんとそばで役者を見上げるのもエキサイティングなのですが、舞台ぜんたいを見渡して、よっく見つめたいものをオペラグラスで追うのもまたオツなものです。

歌舞伎にかけているお金は遠い世界への旅費みたいなものだと思う。

イセエビ(仮名)さんの歌舞伎への向き合い方は、わたしと似ています。「歌舞伎に使うお金は月3万くらい」というルールも、歌舞伎を無理なく命続く限り観ていくために現実的。

ああ、イセエビ(仮名)さん、新橋演舞場は行かれましたか?義賢良かったですね、わたしはみっともないほどボロボロ泣きました、あなたのヒーローは最高にかっこよかった!!万が一どこかでお会いするご縁があったなら、きっと握手させてくださいね。

同人誌「悪友vol.1」は、2/20最終入荷分以降の再販予定はないそうです。本当に、お心当たりのある方は絶対絶対買ってほしい。そして、語り合いましょう。愛について。

 

ジュリー下戸でした。ありがとうございました。