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ジュリー下戸の歌舞かれて東京

歌舞伎のイヤホンガイド解説員になるのが夢のイチ歌舞伎ファンが書いているブログ

四代目に導かれて納涼歌舞伎を観てきました

こんにちは、ジュリー下戸です。

ずいぶん時間が経ってしまったのですが、やっと思いがまとまった気がするので書きます、「納涼歌舞伎」感想。というか、「東海道中膝栗毛伊勢参りなのにラスベガス!?」感想。感想とも言えないかも知れません、今回はとっても気持ち悪いです!
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「お伊勢参りなのにラスベガス!?」もう、なんなのこのタイトル。ぶっとんでる。これを歌舞伎座でやる。いいの?やっちゃっていいの?と、初心者であるわたしはうろたえてしまうのですが、どうやらいいっぽい。東海道中膝栗毛(長いので以下「膝栗毛」)は、弥次さん喜多さんのコンビが伊勢を目指して旅をしていれば、どうやらどう発展させても問題がないらしい。そう、たとえラスベガスを経由してもね。こんなぶっとんだ新作歌舞伎、しかも「ワンピース歌舞伎」でわたしの人生を変えた猿之助丈があの「阿弖流為」の染五郎丈と弥次喜多やるっていうのだから、しかも「超歌舞伎」の獅童丈が何かヤバそうな役をするというのだから、たまらずわたしは並びましたよ3時間。それでも番号は001じゃなかったのだから、恐るべし膝栗毛。

最初に言っちゃいますが、この演目を観終わって、しばし呆然としてしまいました。心から楽しかったし、面白かったけど、何よりわたしが感じたのは「猿之助さん今までありがとう(そしてこれからもよろしくお願いします)」という、どうしようもない感謝の気持ち。ワンピース歌舞伎からしか歌舞伎を知らない、自虐するけど「にわか」みたいなわたしに、歌舞伎の楽しみ方を教えてくれたのは、他でもない猿之助丈です。そして、この夏の歌舞伎座へ、わたしは彼に手を引かれてやってきたような気持ちすらするのです

こんなわたしでも

歌舞伎の演目って、ほかの演目をパロったり、全然関係ない演目の登場人物と同じ名前や見た目をもつキャラクターが出てきたり、ということが良くあるのだそうですね。これは「今まで歌舞伎を観てきた人なら分かる」みたいな、「伝わる人には伝われ」的な、内輪でメタな大人のギャグ。まあ、わたしがその手のギャグで笑えるようになるのは、何十年後かなとか思っていました。ワンピース歌舞伎を観たときだって、従来の歌舞伎ファンが「あの名乗りのシーンは、白波五人男の~」なんて目をキラキラさせているのを羨ましく感じていました。のに

「膝栗毛」の幕が開くと、そこに広がる麗らかな春の景色。あれ?見たことある。デジャヴ。わたしが、藤太役の猿弥丈見たさに幕見をおかわりした、「吉野山」の舞台セットではないですか!しかも、そこで忠信を演じている(劇中劇なんだけど)のは、ほかでもない猿弥丈ではありませんか!!きゃー!!

ついで現れた、日本語の乱れた(「よろしかったでしょうかぁ↑↑」)お茶屋の娘を演じるのは坂東新悟丈。弥次喜多に「いい女だな」「ちょっとデカすぎるけどな」と言われていて面白かったのですが、その娘が持ってきたお茶屋の定食というのが、鮭を丸々つかった鮭定食...新悟ちゃんに鮭とくれば、染五郎丈の「阿弖流為」に決まっていますね。新悟ちゃん演じた「アケド」は、戦いに疲れた仲間達のところへ「みんな、ご飯だよ」となけなしの食料で作った食事を持ってきてくれるのですが、その「阿弖流為」のマスコットキャラクターであるツキノワグマ・熊子が愛する夫に貢ぐ一品、それが採れたて(狩りたて)の鮭なわけで.......会場から漏れるクスクス笑い。そこに混じることができる快感。し、シネマ歌舞伎観ておいて良かった~~~!!

そしてその後、「元海賊で今は山賊」だという、「白井髭左衛門(しろいひげざえもん)」というキャラクターが出てきました。もう、ずっと耐えていたのに思わず「ブフッ」て言っちゃった。他でもない「ワンピース歌舞伎」から、白ひげエドワード・ニューゲートを引っぱってくるなんて!しかも贅沢なことに、演じているのは白ひげ役の市川右近丈そのひと。こ、こ、こんなことってある?わたしは半ばパニック。もっと衝撃を受けたのは、市川右近丈が新悟ちゃんと並んだ時。めちゃくちゃ小さく見えるんですね。「ワンピース」のときは全然そんなふうに見えなかった、山のように大きくて包容力のある絶対的な大きさがあった。もちろん役者の身長差はあるでしょうけど、絶対それだけじゃない。今回の右近丈は「白ひげ」ではなく「髭左衛門」という、悪者だけどなんだか憎めないチャーミングさのある山賊役。白ひげオーラはいらないから出してないんだろうな、と思ったら、もうプロすごすぎない...???と感動せずにはいられませんでした。みんなシネマ歌舞伎で右近さんの白ひげを観ましょう。

以下感想箇条書き

  • 「膝栗毛」は、伏線回収~!とかドロついた情念とか懲悪懲悪~!なかんじは一切なし、頭空っぽで楽しめるエンターテインメントでした。それでいて、歌舞伎を今まで観てきた人が「クスッ」とくる小ネタや時事ネタがあちらこちらに。おもしれ~~~、おもしれ~~~と思っていたら、弥次喜多が空を飛んでって、幕が降りていた。なんだこれ、すごいすごい!
  • 舞台を台無しにするグズグズの黒衣として出てきた染五郎丈、「脱がせ脱がせ」の声に、自分の肩をはだけさせ、猿弥丈に「お前が脱いでどーすんだ」って言われてたんだけど、のっけからセクシーすぎて本当にちょっと照れちゃったわたし。この辺はマジでコロコロコミックって感じだった。
  • 弥次喜多は!!.......お着替え中!!」
  • 「しむらうしろ...」って、言っちゃったよこの人。
  • 壱太郎丈の強く妖しい美しさにノックアウト。初めて拝見したけど、ほ、ほんとにかっこいい...
  • まさかの、猿之助染五郎で連獅子........人生初連獅子がこのふたりなんて、わたしってば本当に贅沢な野郎だわ。
  • でいびっとこと獅童丈の動きが気持ち悪い。気持ち悪いし後半何を言っているのか全然分からない。シンセサイザー弾き出した時はどうしていいのか分からず笑いすぎて、腹筋がひどい目にあった。好き。
  • カジノの場は、ちょっとニューカマーランドを思い出して懐かしくなったり。で、ふと「なんなのわたし、ニューカマーランド出身なの?」と我に帰ったり。
  • 本水の使用があるという情報を入れていなかったので大興奮。でも、ラスベガスのあの有名な噴水で水遊びする弥次喜多、っていう絵面にやっぱり笑っちゃう。ラスベガスのポストカードにしましょう。

猿之助丈に手を引かれて

そんなこんなで、エンディング。花火と一緒に空へ飛び上がった弥次喜多、「三ヶ月の飛び納め」なんて笑いをとりながら夜空をくるくる飛んでいく猿之助丈を見ていたら、なんだかたまらなくなって、気がついたら涙がポロポロこぼれていました

「三ヶ月」とは、猿之助丈がこの三ヶ月ずっと宙乗りをしていたということなのですが、「四の切」「流星」そして今回の「膝栗毛」、気づいたらわたしは全部観ていたのです。本当に、気づいたら。「ワンピース」を、なんだか観てみたくなって新橋演舞場へ行って、明治座をはさみ博多座、念願かなって歌舞伎座デビュー。その演目が「吉野山」でした。そして三ヶ月、毎月通って、シネマ歌舞伎も観て、やがてはじめての夏がやってきた。

何事も都合よく考えちゃうわたしの悪い癖だと笑って頂いて結構なのですが、わたしはまるで猿之助丈に「よくついてきたね」と言われたかのような気持ちになったのです。こんなに鑑賞歴の浅いわたしでも、こんなに歌舞伎の「小ネタ」を楽しめる。あれもこれも、わたしが観てきた数少ない演目から引っ張ってきてくれて「これは覚えてる?これは?」って、次々見せてくれる。全部覚えてる、全部覚えてるに決まってる。全部あなたがくれた大切な思い出なのだから!

こうして、わたしの「ワンピース」からの日々をひと通り振り返り、劇場内が感想を言い合う声でざわざわとする中、わたしは席を立ちました。こんなに泣いていたのは、幕見席ではわたしだけでした。ああ、よかったなあ。観てよかった、観てきてよかった。と、唇を噛み締めながら階段を降り、東銀座をあとにしたのでした。

四代目、わたしの恩人、わたしの憧れ。

わたしの鑑賞予定、お次は仙台。今まで引かれていた手を、まだまだ離すつもりはありません。

 

ジュリー下戸でした。ありがとうございました。

 

追伸

巡業、わたしの愛してやまない坂東巳之助丈が天才・猿之助丈とWキャストっていう、これわたし用なのかな?という衝撃的なアレなので楽しみです。