ジュリー下戸の歌舞かれて東京

歌舞伎のイヤホンガイド解説員になるのが夢のイチ歌舞伎ファンが書いているブログ

六月大歌舞伎で歌舞伎座デビューしてきました

こんにちは、ジュリー下戸です。

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先日、念願かなってとうとう歌舞伎座観賞デビューをしてきました!

六月大歌舞伎、義経千本桜の「道行初音旅(通称・吉野山)」と「川連法眼館(通称・四の切)」。歌舞伎鑑賞を始めてからずっとずーっと憧れていた歌舞伎座デビューとあって、思い切って1等を購入。そしたら、とんだご褒美席でおったまげました。肉眼で汗が見える...

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今後、何度も来ることになるだろうけど、「デビュー」はこれきりなんだもの...(こんなんだから金が貯まらないのだというツッコミは、自分で幾度となく入れているので不要です)。

吉野山

あらすじ

舞台は、桜が見ごろを迎えた春の吉野山。川連法眼の館に匿われている恋人・義経を訪ねて、都から吉野へえっちらおっちら歩いてきた(タフだよね)静御前は、一緒に来ているはずの、義経の家来・忠信とはぐれてしまいました。この忠信、良い奴なのですが、よくこうして姿が見えなくなるのです。でも、静が義経からもらった鼓を打つと、ひょっこり出てくる。尋常じゃなく鼓が好きな様子。なんかおかしいなと思いつつ、まあ出てきてくれるからいっか、と深追いしない静。桜が綺麗なので踊ってみたり、忠信のお兄さんのことなどを話したりして、束の間の休息をとっています。そこに、面白かわいい悪役の藤太と家来たちがやってきて、静を連れて行こうとしますが、忠信の人間離れした強さにあえなく退散。実はこの忠信、静が持っている鼓の材料にされた狐夫婦の子供の狐で、両親と一緒にいたいがために、実家に帰ってこの場にいない忠信に化けて静のお供をしているのです。忠信、今回もしっかり静をお守りできましたとさ。めでたしめでたし。

かわいいかわいい狐忠信

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舞踊シーン大好きなわたくし、この後幕見でおかわりをすることになるほど好きな演目になりました。忠信(本当は源九郎狐!)と静御前は、男女の旅の道連れだけれども、恋人同士ではない。主人の家来と、主人の恋人という関係性なので、一緒に踊っていても「ラブラブ感」が出ないように工夫されているのが面白い。見ていても「多分こいつら恋人じゃないな」と分かる。スゴイ。

かわいかったのが、男雛と女雛を真似た振りのとこ。主人の恋人の隣に男雛として立つなんて...と、ちょっと遠慮がちな複雑な表情を浮かべる忠信がいじらしい。静がしれっとしているのも笑える...(笑っていいのかなここ...でも一生懸命背伸びする忠信かわいすぎて顔がほころんじゃう...)

静が「わたしは踊れないから、あなた踊りなさいよ」と言って忠信に踊らせるところがあるのですが、忠信は「えっ僕ですか...」とキョトンとするんです、セリフがない場面ですが静と忠信の力関係が伺える素敵なやりとりでした。そのあと忠信が静に踊りを指南するのですが、ちょっぴり得意げな忠信も素敵。

かしこ!まって!ございまする!

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一応、この演目の悪役が登場。ぽんぽこりんのちんちくりん、どう見てもゆるキャラ 愛嬌ある出で立ちのこの藤太が、もう面白くて面白くて!!演じる猿弥丈の達者なこと。「桜の色に染め五郎」というような言葉遊びを愉快に繰り広げます。楽しそうな藤太に比べ、無表情(イラストにするならジト目)で黙っている忠信と静。この温度差!

そして、わたしが気になったのが、この家来たちが着ているかわいい衣装。後から先輩が教えてくれたのですが、歌舞伎ではよく登場する衣装で、花四天(はなよてん)という名前なのだそうです。スリットが入っていて、赤いスパッツみたいのを履いていて、赤いハチマキを巻き...そしてそして、お花を背負っているのです!!!なんだなんだ!!春だな!!かわいすぎる!!しかも何人もいる!!!桜並木の擬人化かと思ったわよ。この家来たちが、藤太を一切リスペクトしていない感じがウケます。f:id:jurigeko:20160715210920j:image

結局、メチャ強い忠信が藤太と家来をけちょんけちょんにしたあげく、妖術を使って自分と静の旅支度の手伝いまでさせちゃって、藤太我に返るも「ちくしょー覚えてろー」という感じで退場、ひと段落。

静を先に行かせ、ひとり残る忠信ですが...誰も見ていないと思って、チョウチョにテンションがダダ上がりの忠信。狐っぷりを炸裂させて、元気いっぱいに退場。あーかわいい。やっぱり忠信はかわいい。

一応、人間を演じているときはクールで冷静ぶってはいますが、立ち回りのときにうっかり狐の手の形を作ってしまっていたり、鼓の音にはかなわなかったり、一人になったらのびのび飛び回ったり。このキャラクターの中でのギャップも、チャーミングに演じていらっしゃった猿之助丈に拍手...!!!

四の切

あらすじ

さきほどの演目「吉野山」の続き。川連法眼の館に匿ってもらっている義経のところに、忠信が到着します。この忠信は、狐の方ではなくて本当に本当の忠信。実家に帰っていた彼にとって、義経との再会は本当に久しぶりのこと。義経が「静のこと任せちゃってごめんね」と労をねぎらうのですが、実は静を任せたのは狐の方の忠信。本物の忠信は、全く身に覚えがないので(そして真面目な人なので)「何のことですか」と聞き返します。義経が「いやそれはないだろ、手のひら返しかよ、そういうキャラかよ」とブチ切れているところに、静が遅れて到着。「いつの間に追い越したのよー」と忠信をからかう静にも「いやそれ私じゃないです、絶対偽物がいるんです」と忠信は訴えます。そこで静「そういえば、なんか最近変だったかも」と、しょっちゅう姿が見えなくなることや鼓がやたら好きな忠信の様子を義経に話します。もしかしたらマジでドッペルゲンガーかもよ、ということで本物の忠信を別室に閉じ込め、鼓を打って狐忠信をおびき寄せる作戦に出ます。まんまと出てきた狐忠信(ちょろい)は、さすがにもう本物の忠信に迷惑はかけられないと、狐の姿を見せました。そして、実はその鼓に使われている皮は、自分の両親なのだと、親孝行したいけどできなかった今、せめて一緒にいたいのだと切々と訴えます。物陰で聞いていた義経は、狐忠信に鼓をプレゼント。これでずーっと家族一緒だね、げんくろう!へけ!

なかなか分かってもらえない忠信

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本物の忠信も、狐忠信と同じく猿之助丈が演じていらっしゃるのですが、そこは役者の技で、全く別人のような佇まい。生真面目で忠義深い、信頼のおける部下。静に「うそばっかり~」といじられてもただ首をひねるばかりの、堅物な感じがとても良かったです。その時に、静御前が房のついた扇子を忠信に向けてく~るく~ると回していたのですが、もーーーーーー超かわいいんですけどーーーーー笑也さーーーーん!!!???

元気いっぱいの亀井

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坂東巳之助丈が演じるのは、義経の家来の選抜メンバー亀井六郎。顔が真っ赤、ぎょろぎょろしたお目元にしかめっつら、おまけに太くて大~きな声。この赤いお顔は「血気盛んな若者です」というマーク。他の家来が白塗りでハンサムな中、この亀井くんだけ様子が違いますね。

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義経に「偽物の忠信がうろついているかもしれないから、見てきて」と言われ、意気揚々と花道をかけていく亀井ですが、足音がうるさい。どたどたどた!!!!と、座席に座っている観客も思わずビクっとなるほどの音。なるほど、イヤホンガイドも「元気いっぱい」なんてコメントするわけだわ、と思いましたよ。亀井くんはほどなくして、花道をまたどすどすどす!!!!と駆け戻ってくるのですが、この段階で裃の片腕を脱いでいる。どんだけ走ったのだ。

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きっと館じゅうを、ふすまを開けては閉じ、開けては閉じを繰り返しながら回ったのではないかと思いました。いやきっと、こういうことしてる。

健気な源九郎狐

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鼓と別れ難く、悲しくてぐるぐる回ったり、涙ながらに両親への愛を訴えたり、この狐は本当に健気です。義経から鼓をいただくと、喜んでコロコロと鼓を転がして遊ぶところなど、化けぎつねといえど子供なのだなと感じます。と、そこに義経を狙う悪役たちがやってくるのですが、そこは狐忠信の出番。神通力でひとり残らず操って、あっさり撃退してしまいます。強い...

歌舞伎にはまり始めた頃、先輩がたに、四代目猿之助丈の四の切は絶対観ておいた方がいい!!と言われていたので、思いがけず観ることがかなってとても嬉しかったです。重力を感じさせない狐の動き、かわいらしい一挙一動、胸を打つ両親への想い...どれをとっても「観てよかった」というものばかり。もちろん宙乗りも、盛り上がりました。桜吹雪の中へ消えていく狐忠信、いえ、源九郎狐、幸せそうで良かった...。

大満足のうちに終わった歌舞伎座デビュー。初めての歌舞伎座が四の切(めちゃめちゃ人気演目)だなんて、贅沢しちゃったわ~。一生自慢しようっと!

ジュリー下戸でした。ありがとうございました。

 

追伸

桜吹雪の中に飛び込んでいく宙乗りといえば。