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ジュリー下戸の歌舞かれて東京

歌舞伎のイヤホンガイド解説員になるのが夢のイチ歌舞伎ファンが書いているブログ

新春浅草歌舞伎を見納めてきました

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こんにちは、ジュリー下戸です。

年明けまもなくして新春浅草歌舞伎昼の部を観に行ってから20日後、舞台は千秋楽を迎え、そしてわたしは夜の部を観劇しに行ってきたのでした。
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実は前回、うっかり道を間違えてなかなか公会堂にたどり着くことができなかったのですが、今回はまっすぐ到着。成長を感じますね!
 
 
開場してから、先日はなかった舞台写真売場へ。売り切れ情報なども出回っていましたが、その都度追加してくださっているようで、ほとんど揃った状態で販売してありました。1枚500円。う~~~ん、買わずに済むならそうしたい、けれど、オペラグラスもなく肉眼でじっと観ていたため、表情がしっかり収まった舞台写真はとっても魅力的。
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結局、土佐絵の不破氏と、毛抜の弾正氏に扮する家元の舞台写真をゲット。ああ、土佐絵、好き。
 

お年玉

 
さっそくお年玉挨拶。たまたまなのですが、前回観劇した際もお年玉は松也おにいさん。「千秋楽だから、いつもと違うことがあるんだろうと思ってらっしゃる方もいるでしょう。ありますよ」と言って、会場を沸かす松也さん。エンターテイナーやでえ・・・。そして、始まったのは「手ぬぐい投げ」。歌舞伎ではよくあることなのかしら?袴の袂から、松也さんが手ぬぐいを投げます。
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いやそこ16個じゃないんかーい!!!というツッコミも受けつつ、松也さんの軽妙なトークもあり会場は早くも大盛り上がり。1つだけ混じっている、出演者のサイン入り手ぬぐいを手に入れた方が自己申告なさり、会場からは拍手が。わたしの座っている席には飛んでこず、わたしは羨望のまなざしで見つめるばかり。そりゃ欲しかったわよ!
 

毛抜

 
観劇前から評判の良かった、家元の「毛抜」。イヤホンガイドの家元の解説によると、荒事(あらごと)と呼ばれるジャンルは「まず、悪い奴がいて、そこにすごく強い奴が出てきて、バーン!ズバーン!とやる」ものだそうで(本当にこう言ってた)、家元が演じる弾正という男はその「すごく強い奴」にあたるんですね。いったい、どんな豪傑が出てくるのかと思うじゃないですか。f:id:jurigeko:20160210213952j:image
 
かわいい!!!!!!!!!!!!!(驚愕)
ぷりぷりしながら出てきた家元に心臓ぶちぬかれ、舞台写真を3枚ほど追加したくなる衝動に駆られました。がまんしたけど。
この弾正という男、美少年を口説き美女を口説き、そしてしたたかに振られます。そしてその振る側の腰元、しんごちゃん演じる巻絹さんが、弾正よりも1枚も2枚も上手なのがおもしろい。
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イヤホンガイドがなくちゃ「???」だったであろう台詞ナンバー1。「びびびびび」とは「あっかんべー」にあたる言葉で、言い放ったあとにツンと踵を返して顎をあげて去っていく巻絹さんがかわいいったらない。そこで呆然とひとり取り残された弾正が、観客に「だはは!振られちった!2回も!」って話しかけるメタっぷりが清々しくて好きでした。アメコミでいう、第四の壁。デッドプールかよ。
 
《参考画像》
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頬杖をついて煙管を見つめる弾正、「この家の悪の根っこを断ってやりましょう」とキメる弾正、しっかりキマってにんまりとした表情で花道を去っていく弾正、弾正弾正弾正、どれもチャーミングで憎めず、最後はうっとり見送るばかりなのでした。声がかっこよかったなあ。
 

義経千本桜 川連法眼館の場

 
この日、夜の部開演前に出ていた舞台写真で、唯一売り切れていた写真があったのですが、それが松也さんの狐忠信でした。丸めたお手手を胸の前におき、小首を傾げて目をぱちくりさせた、まあ~~~あざとい狐の写真。この時わたしはまだこの演目を観ていませんでしたので、あざといなぁ~~~コンコン♡ってか、としか思っていなかったのです。
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どこからともなくぴょーん!と飛び出した狐忠信。もふもふの体、耳を模した髪飾り、鼓の音にうっとり耳をすますその表情。かわいすぎる。過去多くの方が演じてこられたであろうこの狐忠信を観てきた方々の感想というと、おおむね辛口だったのですが、わたしは何を隠そうこの演目じたいが初見。軽やかな身のこなし、愛らしい仕草、時折見せる高い身体能力に、いちいち目を見張るばかりでした。ごめん松也さん、冒頭退屈だなんて思ってごめん!と心の中でひたすら謝罪。
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鼓をお前にやろう、と言われたときの狐忠信の輝いた表情が忘れられません。
両親を切に想い慕う子狐の健気なようすに胸打たれ、1階席最後列でぼろ泣きです。よかったねえよかったねえ。松也さん、与三郎が家の外で石を弄んでいるときの表情と、狐忠信義経から鼓を直接受け取ろうとしてやめるときの表情がかわいくて好きです。

 
この演目に関しては、「イヤホンガイドがなかったらすっかり置いてけぼりだっただろうな」と思いました。昼の部の演目と毛抜は、ある程度予習をしていれば物語にはついていけますし、台詞も分かりやすいものが多かったのですが、こちらはそうはいきません。義経がどうしてここにいるのか、静御前はどうしてひとりで刀と鼓を手に得体の知れない何かに立ち向かわなくてはいけないのか(ほんとかわいそう、怖かろう)、どうして義経は鼓を打てないのか、全部教えてくれます。ありがたや。
 

観劇を終えて

 
こうして、わたしにとって初古典歌舞伎であった新春浅草歌舞伎が終了しました。若い役者のフレッシュな魅力を感じるとともに、わたしが感じた歌舞伎の魅力はこれがすべてではないんだろうと思いました。まだまだ、こんなもんじゃないぞ、と言われている気分。これから若い彼らは成長し、芸を磨き、何年も何十年も舞台の上で輝いていくのです。父や祖父、曾祖父、先輩がたの背中を追って。
 
 
話を少し反らします。
先日、わたしの大好きな大好きなフィギュアスケーターが、現役を退きました。わたしは彼と生まれた年が同じで、誕生日も2日しか違いませんでした。彼が世界の舞台に立ち始めたころからずっと応援してきた、大切な大切な選手でした。その選手の引退理由は「自分にはもう4回転が飛べない」というものでした。どんなに彼が努力しても、表現力を磨いても、表彰台には届かない。なんとなく分かっていたことでしたが、その事実があまりに辛く、かなり長いこと打ちひしがれました。事実として、彼はもう若くありませんでした。その世界では、25歳で「年長組」と呼ばれ、30代になれば「大ベテラン」と呼ばれます。
その選手は、坂東新悟さんと同い年でした。
 
 
目の前にいる、若く美しい役者たちを、もしかしたらおじいちゃんになるまで見守ることができるかもしれない。わたしと同年代の彼らがすっかりおじいちゃんになって、わたしはすっかりおばあちゃんになっても、「ますますお父さんにそっくりね」と言いながら応援し続けることができるかもしれない。
そう気づいたとき、なんという世界だろうと震えました。
 
帰りの電車で、筋書きを抱きしめながら、彼らの未来を思いました。
遠い未来のことを考えることなんて、久しぶりでした。
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ジュリー下戸でした。ありがとうございました!